物理探査
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論文
オイルサンド貯留層三次元地質モデルの構築
高橋 明久柏原 功治溝畑 茂治島田 信仁中山 徹古瀬 雅己鳥越 隆弘
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2006 年 59 巻 3 号 p. 233-244

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抄録

 カナダ国アサバスカ地方のオイルサンド地域において坑井データと地震探査データの統合による三次元地質モデルの構築を行った。200 m 以深に存在するオイルサンドからビチューメン原油を生産するには SAGD 法と呼ばれる一種のスチーム圧入法が用いられるが,回収されるビチューメンが配置した水平井の近傍に限られるため,局所的な詳細地質モデルが必要である。また,スチームの広がりを阻害する泥岩層の分布を把握することも重要な課題である。
 最初にシーケンス層序学的手法を用いて坑井間の対比を行い,大局的な地質モデルを構築した。地震探査データには分解能を向上させるために音響インピーダンスインバージョンが施され,さらにマルチアトリビュート解析によって堆積相の分布が予測された。このマルチアトリビュート解析によって基盤直上の泥岩層の分布予測が可能となり,また夾在する薄層泥岩の把握もある程度可能となった。これらの解析結果は地球統計学的手法によって深度変換され,詳細な構造モデルならびに堆積相モデルの構築に用いられた。
 この三次元地質モデルの構築によって,精度の高い可採鉱量予測が可能になると同時に,効率的な坑井配置の設計が可能となった。本解析ではマルチアトリビュート解析が堆積相予測に対して重要な役割を担っているが,この解析結果は使用する坑井やパラメータに大きく依存するため,大局的な地質モデルや音響インピーダンスインバージョン結果を参照して検証することが重要である。

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© 2006 社団法人 物理探査学会
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