2007 年 22 巻 6 号 p. 698-702
症例は82歳,男性.胃癌にて胃部分切除術,Billroth-II法再建を施行された既往がある.増強する上腹部痛を主訴に当院受診し,重症急性膵炎の診断で入院となった.入院後の腹部CTにて,上腸間膜動脈の背側を横走する拡張腸管を認めたため,輸入脚閉塞に伴う急性膵炎と診断した.輸入脚の減圧目的に経皮的腸管ドレナージを施行したところ,腸管の拡張は消失し,膵炎や黄疸の改善を認め,経過は良好であった.しかし,肺炎による呼吸障害が出現し第52病日死亡した.
胃切除後,輸入脚閉塞をきたし急性膵炎を発症することは知られているが,本例は術後25年経過して発症した.Billroth-II法再建の既往がある症例は,急性膵炎の原因として輸入脚症候群を念頭におき,早期に拡張腸管を減圧し,膵炎の進行を抑えることが重要と考えられた.