膵臓
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症例報告
腹腔動脈合併尾側膵切除術後2年間良好なQOLを維持できた局所進行膵体部癌の1例
那須 裕也宮坂 祐司近藤 哲市之川 一臣中久保 善敬敷島 裕之金子 敏文
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2010 年 25 巻 4 号 p. 537-541

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抄録

症例は49歳の男性.平成18年10月に心窩部痛を主訴に当院消化器内科を受診した.精査の結果,腹腔動脈・門脈浸潤を伴う膵体部癌と診断した.11月に手術に先行して総肝動脈塞栓術を施行し,その1週間後に腹腔動脈合併尾側膵切除術・門脈合併切除・横行結腸部分切除術(DP-CAR:distal pancreatectomy with en bloc celiac axis resection)を施行した.病理結果は,ly3,v3,ne3,mpd(+),TS4,S(+),RP(+),PVsm(+),Ace(+),PLce(+),OO(-),N1:pStage IVaであった.手術約1ヶ月後に胃穿孔の診断で穿孔部縫合閉鎖+ドレナージ術を施行した.初回手術から約3ヶ月後にGemcitabineによる術後補助療法を行い退院となった.12ヶ月後,局所再発は認めなかったが,S5・S6の2ヶ所に肝転移をきたし,ラジオ波焼灼治療を施行.その後も化学療法を施行したが,術後25ヶ月で死亡した.手術後に癌性疼痛や難治性の下痢は認めず,死亡する1ヶ月前まで就業可能であった.局所進行膵癌で,DP-CARにより痛みなどのいわゆる末期癌症状がほとんどなく,日常生活の維持が可能であった.

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© 2010 日本膵臓学会
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