2010 年 45 巻 5 号 p. 195-204
各地点におけるオゾン濃度の前駆物質排出量に対する感度レジームを種々の2次生成物質の濃度比など光化学指標と呼ばれる指標を実測することにより推定する方法が提案されている。本研究では,最初にこれらの指標が日本の関東地方においても適用可能であるのかを第I報のシミュレーション結果を用いて調べ,オゾン/全硝酸濃度比は適用可能であること,VOC-sensitive,NOx-sensitiveと判定する際の閾値は,それぞれ,8.6(以下),9.0(以上)であることを示した。そこで,実際に,オゾン/全硝酸濃度比(の分母にあたる全硝酸濃度)を東京都・埼玉県内の5地点で同時に測定し,注意報発令レベルのオゾンが生じやすい夏季の晴天・高温日における各地点の感度レジームを推定した。その結果,オゾンが日最高濃度を示す時間帯においては,都心部の2地点を除くすべての地点でNOx-sensitiveであると推定された。本研究のオゾン/全硝酸濃度比実測に基づく感度レジーム推定結果は,第I報の,日本に自生する植物種に対する近年の放出量測定結果を考慮して推定した植物起源VOC排出量を入力した場合に得られるシミュレーション結果と概ね整合した。