2009 年 52 巻 2 号 p. 103-110
能登半島地震前後での糖尿病患者の血糖管理の変化を検証した.(1)当院通院糖尿病患者373名につき地震前後6カ月間のHbA1cの変動をみると,地震直前の7.32±1.41%に比して2カ月後7.35±1.46%と上昇傾向を示したが,6カ月後(7.19±1.33)有意に低下した.(2)地震直前と地震後のHbA1cの変化量を比べた.地震2カ月後の悪化群(+0.5%以上)は12.1%であり,4, 6カ月後にはその割合はやや増加,また改善群(-0.5%以下)は16.4%であり,4, 6カ月後には若干増加した.(3) HbA1cの変化量(改善・不変・悪化)の3項を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った結果,食事量の減少,コレステロールの低下,HDL-Cの上昇は改善要因であり,体重増加や薬剤中断は悪化要因であった.(4)以上の結果から,平時より食事療法の重要性と血糖管理,薬剤管理を徹底することが必要である.