1961 年 10 巻 6 号 p. 607-612
タリウム(III)は,0.5N硫酸酸性溶液からジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛の四塩化炭素溶液によって抽出され,438mμの波長に吸収極大をもつ安定な呈色を示し,0.1~1.5mg/10mlの範囲で,タリウム量と吸光度との間に,ベールの法則にしたがう直線関係が得られる.本法において,銅とビスマスはとくに大きな妨害を与えるが,あらかじめタリウムを1価に還元しておき,同試薬溶液で銅,ビスマスのみを抽出除去することにより,その妨害を除くことができる.またタリウムと試薬の組成比を検討したところ,その組成は1:2であった.
本定量法を硫酸亜鉛製造時の残サ中のタリウムの分析に応用して,好結果を得た.