日本畜産学会報
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乳用種雄牛の輸入の効果
建部 晃
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1972 年 43 巻 9 号 p. 524-532

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抄録

わが国の乳牛育種において種雄牛の役割は主要な役割を果していることが明白になっているので,輸入種雄牛が泌乳形質に与えている遺伝的効果を母親と娘の泌乳記録成績を用いて調べてみた.その結果,次のことが判明した.
1. 産乳能力検定事業の泌乳記録で調べると,輸入種雄牛の娘牛は非輸入種牛の娘牛よりも乳量と乳脂率共により高い生産力をもっていた.しかしながら,地区間で大きな変異がみられた.
2. 高等登録の泌乳記録で調べると,一般に輸入種雄牛に交配される母牛は非輸入種雄牛に交配される母牛よりも高い生産力をもっており,この傾向は乳量について顕著であった.
3. 母娘比較の値は,種雄牛の泌乳能力を表わす指数となりうる.そこで高等登録の泌乳記録からこの値を算出し分析した結果,輸入種牛はわが国乳牛の乳脂率を高めることに寄与し乳量に対して効果がなかったことがわかった.
4. 乳量と乳脂率の遺伝率を輸入種雄牛と非輸入種雄牛の場合と別々に求めた.乳量の遺伝率は通常知られている数値よりもやや高かったが,乳脂率についてはかなり低かった.輸入種雄牛の遺伝率の方が,非輸入種雄牛の場合よりも両形質とも高かった.この結果から,輸入種雄牛は非輸入種雄牛よりもわが国の乳牛集団に対してより多くの遺伝的変異を供給していると考えられる.
5. 乳量と乳脂率の間の表型相関と遺伝相関は,輸入種雄牛と非輸入種雄牛のいずれの場合にもほとんど0であった.この結果は,欧米で得られているいくつかの数値と異なっている.

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