日本畜産学会報
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メン羊ルーメン細菌の硝酸代謝に及ぼす濃厚飼料の影響
中村 豊多田 豊渋谷 秀行吉田 條二中村 亮八郎
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1979 年 50 巻 11 号 p. 782-789

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抄録

ルーメンフィステル装着メン羊に高硝酸生草のみ,あるいはこれと濃厚飼料とを約5日間にわたって継続給与し,この際のルーメン内硝酸,亜硝酸濃度の変化を求め,またこれと並行して,上記動物のルーメン液から分離した菌体のin vitro培養実験を行ない,ルーメン細菌の硝酸代謝に及ぼす濃厚飼料の影響を検討した.1) 高硝酸生草のみを給与した場合,どの動物においてもルーメン内亜硝酸の経日的増加が認められ,かつ硝酸,亜硝酸の経時変化に関しての個体差は給与回数を増すごとに小さくなった.2) 濃厚飼料を併用すると,生草単用の場合にくらべ,ルーメン内の硝酸の消失,および亜硝酸の出現と消失が速やかになり,さらに併用量を増せばその傾向が一層顕著になった.本実験条件ではルーメン液のpHは,濃厚飼料の併用の有無にかかわらず7付近で大きな変化はなかったが,血中MHbは併用した方がその増加と減少が速く,かつ最高値が低かった. 3) in vitro培養成績によれば,pHの低下が著しくない場合には,濃厚飼料を添加した方が,硝酸の減少,および亜硝酸の増加と減少が速やかであった.4) 以上の結果から,高硝酸生草に濃厚飼料を併用して給与すると,ルーメン内の硝酸の消失,および生成亜硝酸の出現と消失が促進され,そのために血中MHbの増加,減少が速やかになり,MHbの最高値も低くなるから,硝酸中毒を完全に防止できないにしても,中毒症状を軽減し得ると推論された.

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