日本畜産学会報
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高硝酸サイレージ給与時におけるメン羊ルーメン微生物叢の硝酸代謝
中村 豊多田 豊斉藤 智之吉田 條二中村 亮八郎
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1981 年 52 巻 7 号 p. 512-518

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抄録

メン羊に高硝酸サイレージを4日間にわたって継続給与した場合のルーメン内硝酸,亜硝酸の濃度変化を求め,ならびに上記動物のルーメン液から分画した細菌および原虫区分のin vitro培養を行ない,継続給与の前後におけるルーメン微生物叢の硝酸代謝の様相の変化について検討した.1) 高硝酸サイレージ給与初日には,ルーメン内硝酸,亜硝酸の経時変化は,2頭ともほぼ同様の推移を示し,硝酸の減少,および出現亜硝酸の増加と減少が概して緩慢であった.2日目以降では,動物間で速度に差はあったが,硝酸の減少,ならびに亜硝酸の出現と消失が,経日的にある程度まで速くなり,さらに亜硝酸の最高値も低下した.また,硝酸,亜硝酸の消失が速い動物では,乳酸の減少とpHの回復が速く,かつアンモニアと総VFAの増加が速やかであった.2) in vitro培養成績によれば,切換前よりも切換後の方が,硝酸の減少,および亜硝酸の増加と減少が速やかであり,また原虫区分が共存すれば,それらの速度が顕著に増大した.培養液のpHは6.4~7.2の範囲内で大きな変化はなく,また硝酸,亜硝酸の還元が活発であるほど乳酸の減少と総VFAの増加が著しかった.3) 以上の結果から,高硝酸サイレージ給与により,ルーメン内亜硝酸の消失,およびその最高値の経日的な促進が認められ,またルーメン内の硝酸•亜硝酸代謝の促進には原虫および乳酸の存在が大きく関与すると推定された.したがって高硝酸の生草はサイレージとして給与すれば,硝酸中毒の症状を軽減しうる可能性があると推察された.

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