日本畜産学会報
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乾草と牧草サイレージ蛋白質の第一胃内分解特性の比較
藤田 裕松岡 栄高橋 潤一
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1991 年 62 巻 1 号 p. 76-82

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抄録

貯蔵粗飼料蛋白質の第一胃内分解性に関与する要因を明らかにする研究の一環として,イネ科主体牧草の乾草とサイレージについて蛋白質分解率を経時的に測定し,貯蔵方法の相違に基づく蛋白質の分解特性の変化を比較した.
オーチャードグラス主体の同一原料草から調製された乾草とサイレージ6組を供試し,第一胃カニューラ装着の去勢成めん羊4頭を用いてナイロンバッグ法により3時間から48時間経過時まで粗蛋白質および純蛋白質の分解率を測定した.
各試料の蛋白質分解率の経時的測定値について非線形回帰分析を行なって最適回帰モデルを選定し,回帰曲線式のパラメータから分解特性を検討した.
粗蛋白質分解率は培養初期(培養3時間から15時間経過時)にサイレージが乾草にくらべて有意に高く推移し,また,試料による変動の幅が小さかった.これに対し,純蛋白質分解率は各経過時間を通じて両貯蔵飼料間に大きな差は認められず,純蛋白質の分解パターンは乾草とサイレージで近似するものであった.
各試料の粗蛋白質および純蛋白質分解率の経時的変化はLogistic型回帰モデルによく適合した.同モデルから推計された粗蛋白質の分解可能区分の割合は飼料間に有意な差はなかったが,速分解性区分の割合はサイレージが有意に高く,遅分解性区分の割合は乾草が有意に高かった.純蛋白質分解率の推計パラメータには貯蔵方法間に有意な差は認められなかった.
第一胃内における可消化乾物90%消失時点の粗蛋白質分解率から推計した平均dg価は,乾草:66.6%,サイレージ:74.3%であり,貯蔵方法間の差は有意であった,
貯蔵方法の相違は牧草粗蛋白質区分の分解特性を決定する要因として意義の大きいことが確認された.

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