日本薬理学雑誌
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修治附子末およびアコニチンアルカロイドの鎮痛作用について
滝沢 幸穂磯野 智子鈴木 康之早川 由紀尾山 力
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1992 年 100 巻 4 号 p. 307-316

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抄録

ツムラ修治附子末は,附子を一定条件で減毒加工した医療用医薬品であり,各種疾患による痛みに対して用いられている.著者らは,ツムラ修治附子末の鎮痛作用およびアコニチンアルカロイドであるメサコニチンの鎮痛作用について,ラットおよびマウスを用いたいくつかの鎮痛試験によって各種鎮痛薬との比較を行い検討した.鎮痛試験法として,正常な動物を用いた化学的刺激,機械的刺激および熱刺激による疼痛への鎮痛試験に加え,慢性多発性関節炎モデルであるアジュバント関節炎ラットを用いた試験,および反復低温ストレス(repeated cold stress: RCS)を用いた試験を行い鎮痛作用に関して結果を得たので報告する.各種鎮痛試験においてツムラ修治附子末(以下,TJ-3021)は,有意な鎮痛作用を示したが,その作用はツムラ生附子末(以下,TNB)よりも低い傾向であった.また,メサコニチン(以下,MA)は強力な鎮痛作用を示した.すなわち,酢酸ライシング法では,TJ-3021は300mg/kgで有意な鎮痛作用を示した.また,MAは0.5mg/kgで有意な鎮痛作用を示した.Randal1-Selitto法では,TJ-3021 1000mg/kg投与で炎症足で有意な鎮痛作用が認められたが,正常足では有意な鎮痛作用は認められなかった.アジュバント関節炎疼痛法では,TJ-3021 1000mg/kgで有意な鎮痛効果が認められた.TJ-3021 1000mg/kgの鎮痛作用はそれぞれ,TNB100mg/kg,ジクロフェナック(以下,DF)3mg/kg,ノイロトロピン(以下,NT)4mg/kgよりも弱い傾向を示した.MA0.5mg/kgには有意な鎮痛作用が認められ,投与後4時間まで,経時的な増加傾向を示した.ホットプレート法では,TJ-3021 1000mg/kgの鎮痛作用は弱い傾向を示した.RCS法ではTJ-3021 300mg/kgで有意な鎮痛作用を示し,その活性はTNB300mg/kgと同程度であった.MA0.5mg/kgはRCS法においても非常に強力な鎮痛作用を示し,モルヒネ(以下,MPH) 1mg/kgよりも強力な作用が認められた.

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