日本薬理学雑誌
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Dexamethasone 17-valerate(DV-17)軟膏の抗炎症作用
久木 浩平渋谷 具久鶴見 介登藤村 一
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1981 年 77 巻 1 号 p. 73-85

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抄録

dexamethasone(DX)のエステル体である dexamethasone 17-valerate(DV-17)について,軟膏剤として外用適用による抗炎症作用を,既存の軟膏剤である betamethasone 17-valerate(BV-17),bcclomethasone 17,21-dipropionate(BE)および hydrocortisone 17α-butyrate(HC)と同一基剤を用いて比較した.DV-17は,histamine や bradykinin 皮内注射による血管透過性亢進,croton 油滴下によるマウス耳浮腫など浅在性炎症に対しては,顕著な抑制効果を示した.また,各種起炎物質によって惹起した急性亜急性の,皮下組織にまで及ぶラット足蹠浮腫に対しても著明な抑制作用を呈し,比較に用いた DX や BV-17 とほぼ同等の抗炎症効果が認められた.経口投与で検した carrageenin 足蹠浮腫の抑制効果は,DX が DV-17 より有意に強いにもかかわらず,軟膏皮膚塗布では,同等の効果が認められ,エステル体としての DV-17 は外用剤に適するものと思われた.皮下組織よりもさらに深部に埋没した炉紙による肉芽増殖や,adjuvant 関節炎での反対足の効果など,軟膏塗布部位から離れた場所での炎症に対しても,有意な抑制効果を呈したものの DV-17 の効果は弱く,DX より有意に弱いものであった.また副腎や胸腺重量の減少,さらに体重増加の抑制など全身性副作用についても,DV-17 軟膏の方が DX よりも明らかに弱かった。従って DV-17 は適用皮膚から透過し,その局所の炎症に対しては十分強力な抑制効果を呈するが,組織から血行への移行量は少なく,外用グルココルチコイド剤としての有用性が示唆された.創傷部に直接塗布した場合は顕著な肉芽増殖抑制作用があり,またアレルギー性炎症にも明らかな抗炎症作用が認められ,DV-17 は外用抗炎症剤として有効でかつ安全性が高く,臨床上有用な薬物であると考えられた.

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