日本薬理学雑誌
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(E)-1-[Bis-(4-fluorophenyl)methyl]-4-(3-phenyl-2-propenyl)piperazine dihydrochloride(flunarizine)の脳循環に対する作用について
久保 和博唐沢 啓山田 耕二二藤 真明周藤 勝一中溝 喜博
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1982 年 79 巻 5 号 p. 383-400

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抄録

(E)-1-[Bis-(4-fluorophenyl)methyl]-4-(3-phenyl-2-propenyl)piperazine dihydrochloride(flunarizine)の脳循環に対する作用をcinnarizineならびにpapaverineと比較検討した.1)flunarizineおよびcinnarizineの静脈内投与(0.3~3mg/kg)によって麻酔犬の椎骨,総頸,大腿動脈および脳静脈(関節後静脈)血流量は用量依存的に増加し,特に椎骨動脈に対する選択的作用が明らかにされた.一方腎動脈血流量は一過性ながらも減少を示した.papaverine(0.1~1mg/kg,i.v.)は腎以外の動脈血流量を非選択的に増加させた.腎血流以外の作用の持続性はflunarizine>cinnarizine>papaverineの順であった.2)椎骨動脈血流増加作用は3薬物ともに椎骨動脈内投与(0.01~0.1mg/kg)および十二指腸内投与(10,30mg/kg)によっても生じたが,特に後者でのflunarizineの作用は他の2薬物に比べ顕著であった.3)麻酔ネコの脳内局所循環に対してflunarizineおよびcinnarizineは小脳および大脳皮質血流を増加させ,特に前者に対する作用は著しく,脳の他の部位に比べ低用量(0.1mg/kg)より作用が出現した.一方,視床下部血流に対しては不定,海馬では軽度の減少を生じ脳内各部でもその作用は一様ではなかった.papaverineでは上記いずれの部位の血流も増加した.4)gallamine不動化ネコの大脳皮質pO2に対してflunarizineは持続的上昇作用を示し,動脈血pO2およびpCO2には影響を与えなかったことより,その血流増加作用は血管平滑筋に対する直接作用によることが推定された.5)以上の結果flunarizineはcinnarizineと類似の作用を示すが,cinnarizineおよびpapaverineに比べその作用は明らかに持続性であることが示された.

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