日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者脳血管障害に対するリハビリテーションの効果と退院先に関する検討
杉浦 昌也斉藤 宏渡辺 俊允木村 博光幸原 伸夫松村 秩小沼 正臣山口 勇林 積司山本 信行奥川 幸子
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1985 年 22 巻 6 号 p. 558-563

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抄録

老年者脳血管障害に対するリハビリテーション効果を調査し, 阻害因子, 退院先について検討した. 昭和58年4月から59年3月までの1年間に東京都養育院附属病院に入院し理学療法をうけた平均71歳の脳血管障害150例 (男89, 女61例) を対象とした. 日常生活動作能力 (ADL) は歩行機能に注目し, 1度は独歩 (杖使用も含む), 2度は室内移動, 3度はベッド周囲, 4度は寝たきりと分類した.
結果: (1) 脳血管障害は出血27例, 梗塞123例であった. (2) 訓練期間は1カ月以内29例, 3カ月以内69例, 6カ月以内52例であった. (3) 開始時ADLは1度から4度まで6, 25, 40, 79例で, 終了時は同じく, 40, 47, 36, 27例で3, 4度が減り1, 2度が増加した. (4) 終了時ADLに及ぼす影響. 年齢は加齢とともに1度は減じ, 4度は増加した. 片麻痺は左62例, 右73例, 両側片麻痺15例で改善に差はなかった. 訓練開始までの期間では6カ月未満開始群は60%が改善し, それ以後の開始群は60%が3度, 4度に留った. その他知的機能低下, 意欲低下, 患側無視, 皮質枝系梗塞は阻害因子であった. (5) 終了時ADLと退院先の関係は101例 (67.3%) が自宅に退院し, 49例 (32.7%) は諸施設内に留った. ADL別にみると障害が進むにつれて施設ケアの割合が多く, 4度では自宅退院がわずか33.3%であった.
以上, 老年者でもリハビリテーションにより半数以上は1度2度に改善するが, 高齢, 訓練の遅れ, 痴呆, 意欲低下等の阻害因子のため自宅に退院できないものが33%に達した.

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