日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢による膵外分泌機能の変化
新しく提案されたセクレチン静注法を用いて
石橋 忠明松本 秀次原田 英雄越智 浩二田中 淳太郎妹尾 敏伸岡 浩郎三宅 啓文木村 郁郎
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1991 年 28 巻 5 号 p. 599-605

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抄録

膵外分泌機能の標準的検査法として1985年に日本消化器病学会が提案した secretin 試験を用いて膵外分泌機能の加齢変化を検討した. Double balloon 付四重管を十二指腸に挿入し, secretin 100単位 (secretin unit) を静注して10分毎に60分間, 十二指腸液を採取した. (1)液量, (2)最高重炭酸塩濃度または重炭酸塩分泌量, (3)膵酵素 (アミラーゼ, リパーゼ) 分泌量の3因子で膵外分泌機能を評価した. 対象は軽度の上腹部不定愁訴で来院した患者のうち, (1)全身状態が良好で併存疾患を認めず, (2)血液生化学検査, 糞便・尿検査, 上部消化管造影, 膵画像検査所見に異常を認めず, (3)アルコール摂取量や1日25g未満の65名である. 対象を39歳以下群15名, 40~64歳群32名, 65歳以上群18名の3群にわけて比較検討し, 以下の結論を得た.
1) 液量, 重炭酸塩分泌量, 酵素分泌量のいずれについても, 65歳以上群は他の2群よりも有意の低値を示した. すなわち, 高齢者においては膵外分泌機能は低下する.
2) 酵素分泌量が加齢とともに徐々に低下するパターンを示すのに反し, 液量と重炭酸塩分泌量は40歳代をピークとする convex curve を示し, 50歳代後半から比較的急速に低下するパターンを示す. そして, 65歳以上群における機能低下は酵素分泌よりも液量と重炭酸塩分泌量においてより高度となる.
3) 日本消化器病学会の「慢性膵炎臨床診断基準」に該当する程度の膵外分泌機能の低下を65歳以上群18名中10名 (55.6%) に認めた.
4) 65歳以上群と慢性膵炎19名との比較検討も行ったが, 両者における膵外分泌機能の低下を鑑別する特性は発見できなかった. したがって, 高齢者における慢性膵炎の診断は膵外分泌機能検査のみに依存せず, 臨床所見や画像検査所見を含めて総合的に行う必要がある.

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