日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者痴呆患者における血清脂質・リポ蛋白・アポリポ蛋白の検討
栗山 勝法化図 陽一東郷 清児永田 和弥高橋 兼久猪鹿倉 武納 光弘
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1992 年 29 巻 7-8 号 p. 559-564

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抄録

高齢者痴呆であるアルツハイマー型老年痴呆 (SDAT) および血管性痴呆 (VD) 患者における病態生理を解明することを目的に血清脂質, リポ蛋白, アポリポ蛋白, およびステロール代謝の検討を行った. 結果は, 1) 総コレステロール (TC), LDLコレステロール (LDL-C) および中性脂肪 (TG)の高値は認めなかった. 2) HDLコレステロール (HDL-C) は, SDAT, VD群ともに低値を示し, Atherogenic Index (TC-LDL-C)/HDL-Cは高値で, 特にVD群で著しかった. 3) SDAT, VD群ともにアポリポ蛋白AIは正常であったが, AIIは低値であり, そのためAI/AII比は高値, HDL-C/AI比は低値を示し, VD群で著しかった. 4) その他のアポリポ蛋白は著明な変化は認めなかった. 5) Lp(a)は, SDAT, VD群ともに高値を示し, VD群で著しかった. 6) コレステロール前駆物質, 植物ステロールを含め中性ステロール類には著明な変化は認められなかった.
特にHDLリポ蛋白の主要アポリポ蛋白であるアポリポ蛋白AI, AIIに関し, AIは正常値であるのにAIIは低値であり特異な所見を示し, 今後詳細な検討が必要と思われた.

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