日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
70歳以上の地域在住老年者における血中尿素窒素とクレアチニンの基準値設定に関する研究
加齢と腎機能の関係
青野 正松林 公蔵河本 昭子木村 茂昭土居 義典小澤 利男
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1994 年 31 巻 3 号 p. 232-236

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抄録

70歳以上の老年者における血中尿素窒素, 血清クレアチニンの基準値を設定し, 加齢と腎機能との関係を調べるために, 地域在住老年者を対象とした健康診断のデータを, 統計的に解析した.
高知県香北町在住の, 一見健康で, 自立した家庭生活を送っている70歳以上の老年者332例のうち, 血中尿素窒素値あるいは血清クレアチニン値が, 平均値±2×標準偏差をはずれた13例を除いた319例 (男145例, 女174例, 平均年齢79歳) を対象老年者群とした. 某会社に勤務する若年者315例 (男139例, 女176例, 平均年齢28歳) を対照若年者群として比較した.
老年者群の平均血中尿素窒素値は男性 (19.2±4.3mg/dl), 女性 (18.8±4.3mg/dl) で, 男女とも若年者群より有意に高値であった (p<0.0001). 老年者男性群の血中尿素窒素値は, 年齢と粗な相関を認めた (r=0.30, p=0.0002). 老年者群の血清クレアチニン値は男性 (1.1±0.2mg/dl), 女性 (0.9±0.2mg/dl) で, 男女とも若年者群と比べわずかではあるが有意差を認めた(p<0.0001). 老年者群の血清クレアチニン値は, 年齢と相関関係を認めなかったが, クレアチニン値を体表面積で補正すると, 年齢と粗な相関関係を認めた. (男性r=0.31, p=0.0002; 女性r=0.27, p=0.0003).
本研究から推定した, 70歳以上の地域在住老年者における基準値は, 血中尿素窒素が男女とも14~23mg/dl, 血清クレアチニンが男性0.9~1.3mg/dl, 女性0.7~1.1mg/dlとなった. 血清クレアチニン値の差はわずかであったが, 老年者における筋肉量の減少を考慮すると, 腎機能は加齢によって低下し, 70歳以降もその傾向が持続すると考えられた.

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