日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Tokyo centenarian study 4 百寿者におけるアポリポ蛋白E phenotype の検討
広瀬 信義本間 聡起新井 康通川村 昌嗣長谷川 浩石田 浩之清水 健一郎小薗 康範本間 昭中村 芳郎
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1997 年 34 巻 4 号 p. 267-272

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抄録

アポリポ蛋白E (以下アポEと略す) の phenotype が寿命にどの様な影響を及ぼすかを検討する目的で百寿者のアポE phenotype を検討した. 対象は東京在住の百寿者54名でアポE phenotype および allele の頻度分布を調べた. 対照群は文献的に収集した883名に慶応健康相談センター受診者90名を加えた973名とした. 百寿者のアポE phenotype はE2/E2 2名 (3.7%), E2/E3 5名 (9.3%), E3/E3 38名 (70.4%), E3/E4 9名 (16.6%) であり他の phenotype は観察されなかった. 一方対照群ではE2/E2 0.2%, E2/E3 5.8%, E3/E3 73.2%, E3/E4 18.4%であり, 百寿者群ではE2/E2およびE2/E3が多かった. アポEの allele について百寿者と対照群で比較するとε2 8.3% vs 3.6%, ε3 83.4% vs 85.4%, ε4 8.3% vs 10.9%でありχ2検定を行うとχ2値6.841, p値0.0327と有意に発現頻度が異なった. これは百寿者群ではε2の頻度が高いためと考えられる. アポEの phenotype による血中脂質の違いを検討したところE2/E2+E2/E3群ではE3/E3群に比較し有意にコレステロール値, アポ蛋白B値, 低比重リポ蛋白コレステロール値が低下していた. またアポE濃度は有意に高値を示した. 日本の百寿者87名, フランス人百寿者325名およびフィンランド人百寿者179名においてアポE allele の発現頻度を検討した. どの人種でもε2の頻度は対照群の約2倍でありε4は約1/2となっていた. 各群での allele の違いを検討するとフランス百寿者でε2の頻度が高かったがそれ以外はほぼ同じ頻度を示した.上記よりアポE phenotype は寿命に関与する可能性が示唆された.

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