日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
百寿者の日常生活自立度と血清グロブリン分画および免疫グロブリン濃度に関する研究
野崎 宏幸野原 由美子瑞慶覧 涼子安次富 郁哉稲福 徹也秋坂 真史鈴木 信
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1998 年 35 巻 9 号 p. 680-685

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抄録

百寿者101名 (女性77名, 男性24名) の血清グロブリンを電気泳動と免疫グロブリン定量にて検討した. 血清蛋白電気泳動にてMバンド (M蛋白) を有した百寿者数は6名 (全対象者の5.9%)で, IgG型が5名, IgA型が1名で, IgG型の1名は多発性骨髄腫が, 他の5名は本態性 (良性) 単クローン性M蛋白血症が疑われた. Mバンドを有さない百寿者95名の日常生活自立度 (ADL) と血清グロブリンとの関連を検討した. 95名のADLは, 21名がランクJ (生活自立), 25名がランクA (準寝たきり), 23名がランクB (寝たきりではあるが座位可能), 26名がランクC (寝たきり) であった. 自立百寿者のα1-, α2-, β-グロブリン分画の平均値はそれぞれ成人の基準値の上限に近かった. 障害百寿者のα1-グロブリン分画は自立度の低下とともに増加し, ランクB (3.3±0.4%) とランクC (3.4±0.5%) 百寿者では自立百寿者 (2.9±0.3%) より有意に高値であった. 自立百寿者のγ-グロブリン分画は16.9±3.7%で正常範囲内であったが, 障害百寿者では自立度の低下とともに高値となりランクB (21.0±2.7%) とランクC (22.8±4.9%) 百寿者では自立百寿者より有意に高値であった. 障害百寿者のIgG濃度はランクB (1,620±304mg/dl), ランクC (1,720±392mg/dl) 百寿者では自立百寿者 (1,320±361mg/dl) および成人の基準値 (1,150±235mg/dl) より有意に高値であった. 百寿者のIgA濃度は各ランクともに成人の基準値より有意に高値であったが, 各ランク間に有意な差はなかった. 百寿者のIgM濃度は成人の基準値と有意差はなく, また各ランク間にても有意な差は認められなかった.
電気泳動による血清グロブリン分画と免疫グロブリン濃度は寝たきり度, ADLの障害度を反映する貴重な指標であるとともに, 潜在性の疾患や予後を予知する可能性を有する有用な因子である.

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