日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
トランスサイレチン遺伝子変異による高齢発症のアミロイドーシス
中里 雅光松倉 茂
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2001 年 38 巻 4 号 p. 501-506

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抄録

われわれは血清蛋白であるトランスサイレチンの分子異常が中年発症の遺伝性全身性アミロイドーシスの原因物質であることを明らかにしてきた. 今回, 家族歴のない高齢発症の心アミロイドーシスとアミロイドポリニューロパチー患者におけるトランスサイレチンの分子異常を解析した. トランスサイレチンの免疫染色により病理診断の確定した5例の心アミロイドーシスと15例のアミロイドポリニューロパチーの生検または剖検組織より, DNAとアミロイド線維蛋白を抽出した. トランスサイレチン遺伝子の塩基配列解析とアミロイド線維蛋白のアミノ酸配列解析により, 心アミロイドーシス症例のうち, 3例がトランスサイレチン Met 30, 2例がトランスサイレチン Ile 50であった. またアミロイドポリニューロパチーの12例がトランスサイレチン Met 30, 2例がトランスサイレチン Ile 50, 1例がトランスサイレチン Ser 109であった. 代表的な6例の臨床像とDNA診断を含む塩基配列解析ならびにアミロイド蛋白の構造解析の成績も提示した. 高齢発症で家族歴のない原因不明のアミロイドーシスにはトランスサイレチンの分子異常が原因となる例がある. 剖検により初めてトランスサイレチン型アミロイドが証明された例でも, 極めて少量の組織からトランスサイレチンの遺伝子変異を同定することが可能である.

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