1994 年 34 巻 1 号 p. 29-36
拡張性金属ステント (EMS) は気道の外側からの圧排に対しては有用であるが, 悪性腫瘍の気道内浸潤に対しては, 腫瘍がEMSのワイヤーの隙間から増殖してくるため有用ではない. 我々はEMS内への腫瘍浸潤を防止するためシリコン加工合成繊維ガーゼ内張りEMSを試作し, その有用性を検討した. またこのEMSを気道内腫瘍浸潤のために呼吸困難を訴えた3症例に留置した.挿入は局所麻酔で容易にでき, 硬性気管支鏡は不要であった. この治療により呼吸困難は明らかに改善した. 合併症やステントの移動は認められなかった. 腫瘍浸潤による気道狭窄例に対するガーゼ内張りEMSは有用と思われた.