1995 年 35 巻 7 号 p. 937-942
AFP産生肺癌は, 本邦で自験例を含め40例の報告があるが, 今回, 我々は術後10年以上の生存例を経験したので, その予後を中心に検討した.症例1は, 55歳男性.他疾患観察中に右下肺野の異常影を指摘され, 気管支鏡検査で大細胞癌と診断された.血清中AFP値は32000ng/mlと高値を示していた.右中下葉切除を行い, 術後11年目の現在, 非担癌生存中である.
症例2は, 57歳男性.咳, 疾を主訴に左下肺野の異常影を指摘され, 針生検で腺癌と診断された.血清中AFP値は3140ng/mlで, 左肺全摘を行い, 術後2年6カ月目の現在, 非担癌生存中である.両症例とも, 病理病期は1期で, 免疫組織学的に腫瘍細胞内にAFPの局在が証明された.
AFP産生肺癌は, その特徴として男性に多く, 組織型では腺癌, 分化度では低分化なものに多くみられた.手術症例においては, 治癒切除が行われた場合は, 良好な予後も期待しうると考えられた.