日本釀造協會雜誌
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麹Diastaseに対する各種塩類の影響
(附) 糖化液の醗酵試驗
村上 英也奥山 宏造山崎 慶一中川 七三郎羽金 与五郎四谷 善造石葉 安璋石川 正弘
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1952 年 47 巻 12 号 p. 523-512

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抄録

I 60 種の塩類を各種の濃度に蒸溜水に溶解し, この中に於て麹 Diastase の作用が受ける影響について比較した。総ての燐酸塩及び塩化物中のNaClは特に促進効果大きいがその程度は燐酸塩が徐々で広範囲の濃度 (反応液1l 中2000mg でも促進) で促進効果あるに対しNaClは急激で定濃度 (反応液 1l 中100-200mg) を起すや一変して阻害を為す。又単独の NH4OH は勿論他種の陽イオンの塩で何等促進性を示さないものでも NH4°の塩になると殆ど総て促進効果を有し, 従つて燐酸アンモニアは他の塩を凌鴛して促進性を示すがその最適濃度は他の燐酸塩より遙かに低く100mgである。
II Diastaseを常法によりα-Amylase, β-Amylase+Maltase及びMaltaseの区分に分け各々に対する燐酸ソーダ, 食塩, 硫酸アンモン, Buffer (M/20 phosphate buffer) の影響を比較した。之等の塩は全Diastase及びMaltaseに対しては顕著な促進効果を示すがα-Amylaseの作用に対しては殆ど影響が無い。又β-A=mylase+Maltaseに対して燐酸ソーダが多少の影響を及ぼす外は殆ど見る可き促進性を示さない事より, 結局Diastaseに対する塩類の影響は主としてMaltaseに対する影響に帰せられると推論した。然しこの推論はβ-Amylaseを単独に分離しその作用に対する塩類の影響が証明されるまでは延ばされなければならない。又Diastaseに対する塩類の促進性は単に澱粉粒による酵素吸着の防止にあるものとは云い難い。
III 前記実験の反応液を協会7号酵母によつて醗酵させた。醗酵の有無と塩類の種類との関係については酵母の一般生理に関して知られる所と異らずNH4°は醗酵を定常的に起させるのに効果的である。Diastase作用と醗酵との関係については作用液中の生成還元糖量はどんな場合でも全Diastase作用系が最大であるがその醗酵力は常にβ-Amylase+Maltase作用系が最大である。又どんな作用系にせよbufferを用いた場合が常に醗酵力が旺盛である。
終りに本研究に当り御鞭撻を賜つた山田正一, 松本憲次両先生に感謝すると共に助力された岩下晴七, 羽成久彌の二氏に御礼中上げる。

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