窯業協會誌
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高硫酸塩スラグセメントの性質に及ぼす石膏の〓焼温度の影響
山内 俊吉太田 千里
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1955 年 63 巻 708 号 p. 183-188

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抄録

著者らが従来から研究を行っていた特殊スラグセメント (不焼セメント) について, スラグの粉末度をいちぢるしく微粉にして〓焼した硬石膏を添加することによって, 非常に高強度のセメントができることを指摘し, 天然石膏と副産石膏の1種ずつを選び, これらの〓焼温度と試製セメントの物理的性質との関係や石膏の溶解度の変化, 石膏のX線解析等を行い, 加熱による石膏の形態について考察した.
その結果, 粉末度が0.6% (4900目篩残分) のスラグに500-900℃に〓焼した石膏を10% (SO3として5-6%) と, 刺戟剤として軽焼ドロマイトあるいはポルトランドセメントクリンカーを少量配合して試製したセメントは早強ポルトランドセメントに劣らない高強度のものが得られた. これに使用する原料としてのスラグは, 熔滓の温度が高温でよく水砕されたものであれば, 石灰量は必ずしも45%以上の高塩基性スラグであることを必要としない. また, これに使用する石膏は天然, 副産を問わず600-900℃で完全に〓焼されたβ-CaSO4であることを要する. 石膏の溶解度は注水瞬間の溶解度が小さく, 徐々に正常の溶解度に近づくものがよく, また, 副産石膏は不純物 (この場合は僅少の螢石等) の影響によって〓焼による硬石膏化が速いので好ましい結果を与えた. 石膏は1100℃以上の高温に〓焼すると分解するが, これをセメントに配合した場合は興味ある結果を得たが, なお研究を要する.
本研究は文部省試験研究費の援助を受けた. ここに感謝の意を表する.

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© The Ceramic Society of Japan
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