日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸重複癌と大腸癌との遺伝免疫学的相違
福嶋 健一八木田 旭邦松本 英男伊藤 久立川 勲
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キーワード: 大腸癌, 大腸との重複癌
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1989 年 42 巻 3 号 p. 377-383

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抄録

大腸癌272例および大腸癌を伴う重複癌30例のHLA抗原を測定し, 対照310例と比較した.大腸癌で有意に高いHLA抗原はCw3, B35であり, 大腸重複癌ではCw3, DQw3であった.一方, 大腸癌で有意に低いHLA抗原はDRw52であり, 大腸重複癌ではDQw1であった (いずれもcorrected P<0.05).一般の大腸癌症例と大腸重複癌症例でともに有意に高い抗原はCw3であり, とくにより遺伝的因子が強く関与していると考えられている大腸重複癌症例ではCw3抗原が90%と高率であり, 相対危険率は10.5であることより.遺伝的因子が大腸癌の発生に, とくにCw3抗原が重要であることが示唆された.さらに今回の検討で, 免疫応答性の個体差を支配するHLA-classII抗原系においていくつかの有意差のある抗原 (DRw52, DQw1, DQw3) を見い出したことは, 大腸癌の病因が宿主の免疫応答, 免疫抑制と深く関係していることを示唆するものであり, 悪性腫瘍とHLAの検討は重要な問題と考えられる.

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