1994 年 47 巻 6 号 p. 515-518
大腸癌症例30例を対象に,接着因子の一つで大腸癌で高率に発現を認めるsialyl LewisXのリガンドであるELAM-1の血清値を測定し,大腸癌の転移の有無との関係をみるため同時に測定したCEAとCA19-9とを比較して,ELAM-1測定の意義について検討した,その結果,大腸癌症例における血清ELAM-1値は,23.8U/mlから144.7U/mlに分布し,平均66.1±29.5である,健常者の平均値+2SDより,正常値は60U/mlと設定された.また転移の有無で比較したところ,転移のない大腸癌症例(Dukes A,B)の平均が52.2±15.6U/mlに対し,転移を伴う大腸癌症例(Dukes C,D)の平均は87.0±33.6U/mlと有意に高値を示した.さらにELAM-1の陽陰性と転移の有無の関係は,sensitivity 92.9%,specificity 93.8%,accuracy 93.3%と極めて高く,CEAやCA19-9より高率であった.以上より,ELAM-1は,大腸癌の転移の有無をみる腫瘍マーカーとして期待されるものと考えられた.