1997 年 50 巻 8 号 p. 584-593
原発性虫垂癌は臨床的に遭遇することのきわめて稀な疾患であるが,その解剖学的存在部位から見てある程度進行した段階にならないと症状を発現せず,このことがこの疾患の予後を悪くする一因となっている,われわれは,原発性虫垂癌が膀胱に浸潤し膿,血尿をきたした1例と,右尿管に浸潤しこれを閉塞して症状発現した1例の2症例を経験したので報告する.第1症例は盲腸部分切除と腫瘍浸潤部を含あて膀胱壁切除を行い,第2症例は回盲部切除と右尿管を5c皿合併切除し再建している,膀胱浸潤をきたした第1症例は膀胱局所再発し癌死している.1982年以後の原発性虫垂癌報告症例64例を検索し集計したところ尿路系浸潤症例は12例,18.8%であり,尿路系以外への浸潤(回腸後腹膜おのおの,4.7%,S状結腸,生殖器おのおの,3.1%)に比して高率であるとともに,破裂に伴う腹膜偽粘液腫の12.5%より多いことが判明したので報告する.