日本応用動物昆虫学会誌
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スジマダラメイガの増殖に及ぼす性フェロモンの影響
若村 定男北村 実彬高橋 正三
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1975 年 19 巻 3 号 p. 182-186

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抄録

羽化直後のスジマダラメイガ未交尾成虫2対を,腰高シャーレ(径11cm,高さ7cm)に入れ,合成性フェロモンcis-9, trans-12-Tetradecadien-1-ol acetate 100μgを浸み込ませたホルダーを容器内側にとりつけた。2日後から毎日一定時刻に卵を採取し産卵数を調べたところフェロモン処理区には,対照区に比べて1/2産卵日に平均2.8日の遅れが認められた。また,総産卵数は,統計的に有意な差ではなかったが,減少した。フェロモン処理区で産まれた卵からも,対照区と同様に,正常な成虫の羽化が性比ほぼ1対1で認められた。したがって,受精雌への合成フェロモンの影響はほとんどないと考えられる。また,フェロモン量を増しても,ある程度以上の1/2産卵日の遅れや,産卵数の減少は,認められなかった。一方,腰高シャーシに5対,10対,30対と成虫を入れ,同様に処理した場合には,2対の場合に認められたような対照区との差は認められなかった。2対合成フェロモン処理区における産卵の遅れの原因は,合成フェロモンにより交尾,特に初期の交尾がある程度阻害されたことによると考えられる。一方,交尾阻害が完全でなかったのは,腰高シャーレに2対という成虫密度では,偶然の出会いによる交尾が可能であったことを示唆している。

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