1990 年 34 巻 1 号 p. 37-41
ワタアブラムシにおいて殺虫剤の分解・解毒酵素のひとつと考えられているエステラーゼの活性値を指標として,本種の寄主選好性を検討した。
1) 16種類の寄主植物から採集した124個体群,合計3,679匹のエステラーゼ活性を個体別に測定したところ,酵素活性の個体頻度分布は0∼10nmolおよび40∼50nmolにピークをもつ明瞭な2山型を示した。このことから,本種を低活性個体と高活性個体とに大別できた。
2) 酵素活性の頻度分布を寄主植物ごとにみると,ウリ科作物では高活性個体の頻度が高く,ナス科作物と雑草では低活性個体の頻度が高かった。また,イチゴとキクなどではこれらの中間的な頻度分布を示した。
3) 同一圃場から採集した個体群であっても,寄主植物が異なると酵素活性の頻度分布が異なった。
4) メロンの個体群では,採集時期にかかわらず高活性個体のみが検出された。
5) 以上のことから,ワタアブラムシには寄主作物を異にするいくつかのバイオタイプが存在し,本種の薬剤抵抗性にこのような寄主選好性が密接に関連していることが推察された。