日本心臓血管外科学会雑誌
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冠動脈バイパス術後縦隔血腫防止の試み
上縦隔留置ポータブル持続吸引器の効果について
田ノ上 禎久松井 完治倉員 敏明安垣 享松崎 浩史河野 博之真弓 久則
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1995 年 24 巻 5 号 p. 286-289

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抄録

冠動脈バイパス術後の縦隔血腫の発生防止を目的として, 上縦隔にポータブル持続吸引器を留置し, その効果を判定した. 連続179例の冠動脈バイパス術症例を対象とし, 通常の下部縦隔ドレーンのみのI群97例と, 下部縦隔ドレーンに加え上縦隔にポータブル持続吸引器を留置したII群82例について以下の検討を行った. 総ドレーン出血量は有意差は認めないもののII群がI群より高値を示した. 縦隔胸郭比 (対術前値) は術後1日目I群134±22%, II群123±15%, 術後7日目I群133±20%, II群122±14%といずれもII群はI群より明らかな低値を示した (p<0.001). 術後合併症としてI群に縦隔洞炎2例, 心タンポナーデ5例を認めたが, II群にはこれら合併症の発生は認めず, 合併症発生率には両群間に有意差を認めた (p<0.02). 以上より, 本吸引器の縦隔血腫減少効果は明らかであり, 縦隔洞炎・心タンポナーデの発生防止にも有用であることが示唆された.

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