日本心臓血管外科学会雑誌
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右冠動脈左バルサルバ洞起始および大動脈壁内走行を示す症例に対する大動脈基部全置換術
冠動脈再建術式における一工夫
安恒 亨松井 完治原口 菜穂倉員 敏明松崎 浩史
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1996 年 25 巻 1 号 p. 67-70

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抄録

冠動脈起始異常を伴う症例に対する大動脈基部全置換術の報告は未だみられない. 今回われわれはIV度の大動脈弁閉鎖不全と60mmの大動脈基部動脈瘤を有する63歳男性に対し, 23mm St. Jude Medical 弁と24mm Gelseal 人工血管で作成した composite graft を用いて大動脈基部全置換術を施行した. この際, 右冠動脈が左バルサルバ洞より起始し, さらに大動脈壁内走行を示していたため, 冠動脈再建に工夫を要した. 冠動脈再建は Piehler 法を応用し, 近接した両冠動脈口を1本の10mm Gelseal 人工血管にて同時に再建した. この際, 壁内走行を示す右冠動脈の損傷を防止するため, 壁内走行部の人工血管縫着には自己心膜を介在させた. 術後造影結果も良好であり, 本冠動脈再建法は冠動脈の起始異常, 壁内走行を示す症例において有用な術式と考えられた.

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