日本心臓血管外科学会雑誌
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臓器虚血を合併した急性A型大動脈解離症例の検討
福村 好晃坂東 正章下江 安司片山 和久吉田 誉片岡 善彦
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2001 年 30 巻 4 号 p. 182-186

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抄録

1986年から現在までに134例の急性大動脈解離症例を経験したが, そのうち10例が臓器虚血を合併したA型解離症例であった. 年齢は53~78 (平均64.6) 歳, 男女比は6:4. 虚血臓器は脳3例, 心臓1例, 腸管5例, 腎臓2例, 四肢7例で, 5例に複数臓器虚血を認めた. 手術前死亡1例, 開胸後破裂死1例を除く8例に手術を施行した. 手術はSMAバイパス1例, 右冠動脈ステント留置後第19病日大動脈修復1例, 急性期の大動脈修復6例である. 死亡率は脳虚血 (2/3), 腸管虚血 (4/5), 腎虚血 (2/2), 複数臓器虚血例 (4/5) で高く, 全体で50% (5/10) であった. また入院時の Base Excess (B.E.) 値が-10mLEq/l以下の症例は全例 (4/4) 死亡した. 救命率向上のためには, 症例に応じた治療方針の選択が必要で, 大動脈修復と経皮的インターベンションなど低侵襲の虚血解除策との組み合わせが必要である. また, その治療方針決定や予後の予測にB.E. 値が簡便で有用と思われた.

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