狭小大動脈弁に対する各種19mm機械弁の遠隔期心機能および予後について検討した.1990年から2002年9月までに施行した単独大動脈弁置換術(AVR)295例中で大動脈弁狭窄症(AS)に対し19mm機械弁を使用した46例を対象とし,予後について検討した.また,5年以上経過した25例中22例(5~9年:12例,10年以上:10例)に心臓超音波検査を施行した.左室駆出率(LVEF),左室拡張末期短経(LVDd),後壁厚(PWT),心室中隔厚(IVST),人工弁圧較差(PG)をそれぞれ計測し左室心筋重量(LVm),左室心筋重量係数(LVMI)を算出し,術前と遠隔期での結果を比較検討した.平均観察期間は63.1±43.5ヵ月.在院死亡はなく,10年生存率が81.4%と良好であった.心機能に関しては保たれNYHAの悪化もなかった.また,遠隔期に25.0mmHg程度のPGの残存を認めたもののLVm,LVMIの有意な減少を認めた.比較的高齢者や女性が多く,体表面積(BSA)が小さいこと,日常生活での運動負荷が少ない患者が多かったことが要因とも考えられるが,狭小大動脈弁患者の多くは,小柄な高齢女性であることから,19mmサイズの弁置換術でも遠隔期のquality of lifeは保たれると思われた.