日本心臓血管外科学会雑誌
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ラット新鮮同種導管移植モデルにおけるサイクロスポリン短期大量投与の効果
滝口 信平松 健司黒澤 博身金井 孝夫
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2005 年 34 巻 4 号 p. 253-260

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抄録

Rastelli型手術のさい,使用される右室-肺動脈間の導管にホモグラフトを使用すると,同種にしろ異種にしろ遠隔期において数年で石灰化がおこり,右室流出路の通過障害が発生し再手術が必要となることがある.しかし,移植された導管内の内皮細胞や平滑筋細胞がいつまで生存するか不明のままであり,拒絶反応がおきて石灰化にいたっているかどうかも証明されていない.そこでホモグラフト導管移植モデルを利用し,移植時より免疫抑制剤(サイクロスポリンA(CsA))を投与し,移植された導管の形態学的,病理学的変化に差があるか経時的に観察した.実験には生後8~9週齢のラット,雄King(ドナー)と雌Lewis(レシピエント)を用い,胸部下行大動脈を腎動脈下腹部大動脈に移植した.実験群はCsA非投与群(n=35)と投与群(n=44)とした.移植後1,2,4,6,8,12週後に犠牲死させ,採取した血管を長軸方向にスライスし光学顕微鏡で観察した.血管断面積,内膜面積および中膜面積を,2種類の方法にて算出し,それらを用いて内膜中膜面積率,内膜・中膜面積比,内膜面積率,中膜面積率を算出し検討した.CsA短期大量投与後,急性期における内膜中膜面積率および内膜面積率で有意に抑制効果が認められ,同種導管移植後急性期における内膜肥厚には,拒絶反応関与の可能性が示唆された.

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