2005 年 34 巻 2 号 p. 98-102
1996年8月から2002年12月までに行った単独冠動脈バイパス術のうち,左内胸動脈を左前下行枝に吻合し,橈骨動脈を回旋枝に吻合した162例を対象とした.橈骨動脈を上行大動脈に中枢吻合した135例をAC群,橈骨動脈を左内胸動脈に端側吻合してY-graftとした27例をY群とし,早期および中期成績の比較検討を行った.入院死亡は認めず,術後合併症は脳梗塞を含めて両群間に差を認めなかった.回旋枝への橈骨動脈グラフトの早期開存率は,AC群97.8%,Y群87.1%で有意にY群が不良であり(p=0.017),術後平均21.7±15.8ヵ月の遠隔期開存率はAC群90.9%,Y群36.4%で,有意にY群が不良であった(p=0.0008).AC群において早期に良好に開存していた橈骨動脈グラフトのうち遠隔期に問題を認めた症例はなかったが,Y群において早期に良好に開存していた橈骨動脈グラフトの25吻合のうち3吻合において,遠隔期にstring signとなっていた.橈骨動脈による回旋枝へのバイパスは,左内胸動脈に端側吻合してY-graftとするより,可能なかぎり上行大動脈に中枢吻合すべきであると思われた.