1992 年 25 巻 4 号 p. 1090-1094
下大静脈および門脈本幹, 左右門脈枝に腫瘍塞栓を合併した肝細胞癌の1例に対し, Bio-Pumpを用いた体外循環下に, 肝右葉切除と下大静脈部分切除, 門脈部分切除による腫瘍塞栓除去術を施行した. 下大静脈内腫瘍塞栓は短肝静脈より進展したもので, 肝静脈流入部以下で血流遮断が可能であったため, 単純遮断法でも切除可能と考えられたが, 腫瘍塞栓の血管壁浸潤の十分なる観察と下大静脈再建の時間的余裕を考慮して, 安全な手術補助手段を併用した.
術後経過は良好であったが, 4か月目に再発をきたして死亡した.剖検では残肝内に多発性の再発病巣が確認されたが, 遠隔転移は認められなかった.このような高度の腫瘍塞栓合併例には術後早期の積極的な肝動脈塞栓術や化学療法の併用が必須であると考えられた.