頻回にわたる大量吐下血を主訴として来院した51歳女性.内視鏡検査では, 十二指腸下行脚内側に巨大な易出血性腫瘤を認めた.生検の結果, 平滑筋肉腫の診断を得た.吐下血が断続的に続き, 黄疸も同時に出現し増強傾向にあったので外科的治療が必要と判断し開腹手術を施行した.下大静脈, 上腸間膜動脈を圧迫していたが, 腫瘤は遊離可能であり, 膵頭十二指腸切除術を施行した.手術後, 病理組織学的検索では, 膵管上皮から発生した腺癌と, 間質は平滑筋肉腫が混在し, 膵癌肉腫との診断を得た.腹部腫瘤触知, 吐下血, 黄疸と臨床的にも興味深い経過を示し, ごくまれな膵鉤部より発生した癌肉腫を経験した.いわゆる癌肉腫について本邦報告例の3例を含め, 若干の文献的考察を加え報告する.