日本消化器外科学会雑誌
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Somatostatin analogueによる難治性膵液瘻の治療
藤井 祐三小崎 浩一清水 浩武田 泰隆三枝 好幸米戸 敏彦江里口 正純関口 守正
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1993 年 26 巻 3 号 p. 842-846

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抄録

膵切除後の膵液瘻の治療は長期化し難渋することが多い.Somatostatinは,成長ホルモンやgastrin,glucagon,insulinなどのホルモンだけでなく膵外分泌に対しても抑制作用がある.そこで,somatostatinのanalogueであり半減期の長いSandostatin ®を用いて膵液瘻の治療を試みた.症例は,膵頭十二指腸切除術(PD)2例(胆管癌,乳頭部癌),胃全摘膵体尾脾切除術(胃癌),膵体尾脾切除術(膵癌)の術後膵液瘻を形成した4症例およびPD後(乳頭部癌)予防的に投与した1例である.Sandostatin®は,100~200μg/dayを5~15日間投与した.PD術後の3患者の膵液量は,本剤投与により投与前の44%,48%,68%に減少し,膵液瘻は全例3~27日間で閉鎖した.また,本剤により血中アミラーゼの低下および血糖値の上昇する傾向が見られたが中止により回復した.嘔気,嘔吐が2例に見られたほかは副作用もなく,高カロリー輸液を併用したSandostatin®の投与は,膵液瘻の治療だけでなく術後の予防にも有効と思われた.

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