症例は61歳の男性.胃角部, 幽門部にそれぞれ早期胃癌を認め, 胃亜全摘を施行し両病変ともsmであった.術前術中肝転移を認めず血清AFP値は正常であったが, 経過観察中巨大肝転移を認め血清AFP値の著明な上昇を認めた.胃切除標本にAFP染色を行ったところ幽門洞の病変に陽性細胞を認め, AFP産生胃癌を伴った多発早期胃癌の肝転移と診断した.
本邦におけるAFP産生早期胃癌18例を集計し検討したところ, 約半数に肝転移を認め, 術後肝転移を認めた症例はすべて1年以内に再発していた.組織型では髄様増殖を示す低分化腺癌を多く認めた.