1996 年 29 巻 3 号 p. 684-690
閉塞性黄疸 (閉黄) 時のnitric oxide (NO) の産生および意義に関する報告は少なく, 今回閉黄ラットを用いて実験的に検討した. 門脈血中NO-2/NO-3は閉黄7日まで, 増加し, NO合成酵素阻害剤 (L-NAME) の投与により有意に抑制された. 閉黄後肝組織血流量は有意に低下し, L-NAME投与によりさらに低下した. 閉黄7日の肝組織には, 誘導型NOS mRNAが誘導された. 胆汁のNO産生の影響を調べるため培養細胞を用いた実験では, 黄疸胆汁はNO産生に影響を及ぼさなかったが, 非黄疸胆汁はNO産生を有意に抑制した.
閉黄により肝組織血流は低下するが, 腸肝循環障害やbacterial translocationによる血中エンドトキシン増加などにより, 肝類洞や門脈系においてNO産生が亢進し, NOは肝組織血流の低下を抑制し肝保護的作用があると考えられた. また, 閉黄胆汁はNO産生を抑制せず, 閉黄時の胆汁はNO産生に関して生体に有利に作用することが示唆された.