日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
結腸粘液癌を合併し, 胃壁内への転移を来した原発性小腸癌の1例
河合 正巳松崎 安孝弥政 晋輔日江井 賢松永 宏之山口 喜正
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 30 巻 9 号 p. 1957-1961

詳細
抄録

症例は68歳の男性で下血で発症し, 血色素4.5g/dLと著明な貧血を認めた. 胃内視鏡および小腸造影検査により胃癌と小腸腫瘍の重複癌と診断し手術した. 空腸に15cm径の腫瘤を認め, 第1, 2空腸動脈を切離してこれを摘出し, さらに幽門側胃切除を施行した. また結腸肝轡曲に結腸粘液癌を認めたため, 右半結腸切除を追加した. 組織学的には小腸病変は印環細胞を伴わない粘液癌であったが結腸の粘液癌には印環細胞が多数認められた. 胃の病変は粘膜下層に病変の主座があり, 小腸病変に類似した粘液癌の中央に正常胃粘膜上皮の配列を認めた. 以上より本例を小腸・結腸の重複癌および小腸癌の胃転移と診断した. 術後は良好に経過し, 術後1年5か月を経た現在は外来通院中で再発の徴候を認めない. 小腸癌はまれで予後不良であり, 小腸癌を原発とする胃転移癌の本邦での報告は認められなかった.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top