2000 年 33 巻 4 号 p. 543-548
消化器癌治療上の大きな問題として, 肝転移が挙げられる. 本研究において, 我々は肝転移制御に対する遺伝子治療の有用性に関して検討した. アデノウイルスベクターを用いて, tissue plasminogen activator (tPA), interleukin 10 (IL10), I kappa beta (IKB) 遺伝子を腫瘍組織, 肝臓へ導入し肝転移抑制効果を検討するとともに, 抗癌剤との併用効果を検討した. その結果は, 1) tPA, IL10遺伝子を用いた腫瘍組織, 肝臓への遺伝子導入により, 肝転移が抑制されること, 2) IKB遺伝子とCDDPを併用した場合, 肝転移抑制に相乗効果を示すこと, が明らかとなった. 以上から, 肝転移制御のための, 腫瘍組織および肝臓に対する遺伝子治療は, 新しい治療手段として有用であると示唆された.