日本消化器外科学会雑誌
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Helicobacter pylori感染を伴う胃癌と胃MALT腫の共存例
望月 能成牧野 達郎山崎 安信須田 嵩竹村 浩中村 宣子
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2000 年 33 巻 5 号 p. 605-609

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抄録

症例は62歳の男性. 1997年5月より心窩部痛が出現. 近医で多発胃癌を疑われ, 当院を紹介受診. 血清学検査でHelicobacter pylori (以下, HP) 抗体が陽性であった. 上部消化管造影検査と胃内視鏡検査では, 体上部前壁に3型の病変を前庭部後壁に2型の病変とその肛門側に小隆起を認めた. 生検の結果, 体上部の病変は低分化腺管癌であり, 前庭部の病変はともに異型細胞の増殖であった. また, 生検材料からはHP の菌体も認めた. 同時性多発胃癌を疑い, 1997年8 月14日胃全摘術+脾臓摘出術を施行した. 病理組織学的検査では体上部の病変はpor2, t3 (se), n2 (#8a,#9,#10,#11), H0, P0, M0, stage IIIbであった. 前庭部の病変は胃MALT 腫であり, 深達度はsm, リンパ節転移はなかった. 胃癌と胃MALT リンパ腫の共在はまれとされるが, HP感染は胃癌や胃MALT リンパ腫発生の共通の危険因子であり, 互いの共存も念頭に入れた精査が必要である.

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