症例は58歳の男性. 上腹部痛を主訴に近医を受診し, 腹部超音波検査, 腹部CTにより膵臓に腫瘍性病変を指摘され当院を紹介された. 初診時, CEA, CA19-9などの腫瘍マーカーは異常を認めなかったが, 好酸球増多を伴った白血球の増加とCRPも1.9mg/dlに上昇していた. 腹部超音波検査とEUSでは嚢胞成分を伴った膵頭部腫瘍を認め, 腹部CTと腹部血管撮影では上腸間膜静脈への腫瘍浸潤が疑われた. ERCPでは膵頭部領域において主膵管のびまん性狭窄を認めSantorini管も同様の狭窄像を呈していた. 膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理組織検査により, 好酸球と好中球の浸潤の目立つ退形成性膵管癌 (巨細胞癌) と診断された. 術前認めた好酸球増多を伴った白血球の増加は術直後より正常化したが, 腫瘍の再発に伴い再増加した. 術後経過は良好であったが, 転帰はきわめて不良であった.