日本消化器外科学会雑誌
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全結腸におよぶ壊死性虚血性大腸炎の1例
川口 雅彦藤岡 重一若狭 林一郎村田 修一
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2002 年 35 巻 12 号 p. 1835-1838

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抄録

全結腸におよぶ壊死性虚血性大腸炎はまれな疾患であるが, 大腸穿孔から腹膜炎を引き起こし, しばしば重篤な病態を呈する. 症例は生来健康な51歳の女性で, 臍周囲の間欠的な腹痛を主訴に来院した. 血液検査では白血球数とCPKの軽度上昇を認め, CT検査では回盲部の浮腫と横行結腸の拡張を認めた. 急性腸炎の診断で入院となったが, 腹痛が増悪し汎発性腹膜炎所見を呈した. 緊急開腹術を行うと腹腔内には大量の血性腹水が充満しており, 盲腸から脾彎曲部までの大腸が壊死していた. 上下腸間膜動脈の走行異常はなく明らかな動脈閉塞所見は認めなかった. 術中にS状結腸へ壊死部分が広がるのが観察され, 大腸亜全摘と回腸人工肛門造設術を行った. 術中の腹水と便の培養では起炎菌を認めなかった. 病理組織学的検査では大腸粘膜は出血を伴う急性循環障害と考えられた. 本疾患は, 大腸の虚血壊死が急速に進行する病態で致命率が高く, 迅速な外科的治療が必要である.

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