日本消化器外科学会雑誌
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腹腔動脈起始部閉塞を伴う胆管癌症例に2期的手術として膵頭十二指腸切除術を施行した症例
川口 清瀬尾 伸夫太田 圭治矢作 祐一拓植 通鈴木 久美子縄田 真一
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2003 年 36 巻 4 号 p. 272-277

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抄録

腹腔動脈起始部閉塞のある症例では, 膵頭十二指腸切除の際, 側副血行路を切離するため腹腔動脈領域の血流喪失が問題となる. 正中弓状靱帯圧迫による腹腔動脈閉塞を伴った胆管癌の1例を経験したので報告する. 症例は54歳の男性. 閉塞性黄疸で入院. 精査の結果, 膵頭領域癌と診断したが, 血管造影で, 腹腔動脈起始部閉塞と, 上腸間膜動脈から胃十二指腸動脈を介しての, 腹腔動脈領域造影を確認した. 造影CTによる多断層画像を再構成した画像による矢状断像で腹腔動脈と大動脈の分岐角の狭小化が認められ, 閉塞の原因は正中弓状靱帯による腹腔動脈起始部圧迫と診断した. 根治術を行うには, 腹腔動脈の血行再建が必要と考え, まず開腹下に大伏在静脈のパッチを用いた腹腔動脈形成術を施行. 術後経過良好で, 14日後の血管造影にて腹腔動脈の開存を確認し, 20日後に膵頭十二指腸切除術を施行した. 病理検査結果は胆管癌であった. 術後経過は良好である.

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