日本消化器外科学会雑誌
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直腸癌子宮浸潤による子宮留膿腫穿孔から汎発性腹膜炎をきたした1症例
曽ヶ端 克哉水島 康博松村 将之川本 雅樹野村 裕紀秦 史壮染谷 哲史八十島 孝博佐藤 卓平田 公一
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2005 年 38 巻 4 号 p. 469-473

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抄録

症例は88歳の女性で, 発熱・食欲低下を主訴に受診し, 腹部CTにて虫垂周囲膿瘍と触診にて腹膜刺激症状を認めた. 血液検査上, WBC27,600mm3, CRP34.8mg/dlと高度の炎症所見を伴っていたため虫垂穿孔による汎発性腹膜炎と診断し手術を行った. 術中所見では子宮底部に穿孔を認め, 直腸癌が子宮に浸潤し左尿管・左卵巣を巻き込んでいた. 膀胱への浸潤を認めなかったため直腸・子宮・左卵巣合併切除および人工肛門造設術を施行した. 病理組織学的には, 直腸癌が子宮筋層に浸潤しているのを確認した. 本症例は癌の浸潤により子宮内腔が汚染され, 癌の進行とともに子宮に機械的閉塞を生じ子宮留膿腫を引き起こし穿孔したまれな症例であった. 高齢女性の汎発性腹膜炎に遭遇した場合, 子宮・付属器の疾患も十分に考慮しつつ骨盤腔を精査し手術に望むべきであると思われた.

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