日本消化器外科学会雑誌
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茎捻転による副脾破裂の1例
錦織 直人青松 幸雄藤本 平祐井上 隆桑田 博文中島 祥介
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2007 年 40 巻 5 号 p. 639-644

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抄録

副脾の発生頻度は剖検例の10~30%と報告されているが, 臨床的に問題となることはほとんどない. 我々は極めてまれな副脾茎捻転による副脾破裂の1例を経験した. 症例は32歳の男性で, 左側腹部痛を主訴に来院し同部に著明な圧痛, 反跳痛を認めた. 血液検査にて貧血の進行を認め, 腹部CT・腹部血管造影検査にて脾臓腹側に脾動脈分枝を腫瘍血管とする15cm大の腫瘤像を認めた. 脾腫瘍破裂による腹腔内出血の診断で緊急開腹手術を行った. 多量の血性腹水と網嚢内に凝血塊が充満しており, 開放すると膵前面に7cm大の副脾を認め, 脾動静脈から分岐し流入する血管茎が時計方向に720°捻転していた. 副脾門部の被膜が破綻しており同部位からの出血と考えられた. 以上より, 茎捻転による副脾破裂と診断し副脾を摘出した. 副脾茎捻転に伴う副脾梗塞, 破裂は非常にまれな疾患であるが, 若年者の急性腹症の鑑別診断として念頭におくべき疾患であると考える.

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