症例は48歳の女性で, 突然の上腹部痛を主訴に外来受診した. 腹部造影CTで上腸間膜静脈内の透瞭像と腸管浮腫を認め上腸間膜静脈血栓症が疑われた. 腹膜刺激症状は認めず腸管壊死の可能性は低いと判断し, 発症7時間目に腹部血管造影検査を行い, 静脈相にて回腸静脈最終枝の描出不良を認めた. 回腸動脈最終枝分岐部に動注カテーテルを留置しウロキナーゼによる血栓溶解動注療法とヘパリンの全身投与を行ったところ同静脈の再開通を認めた. 4日目よりワーファリン内服を開始し保存的治療にて退院となった. 本疾患の成因は種々あるが, 本症例は既往疾患なく凝固線溶系も異常を認めないことから特発性と考えられた. 本疾患は腸管壊死となり手術となれば広範囲小腸切除となる可能性が高いが, 今回発症後7 時間から血栓溶解動注療法を開始し非手術療法を完遂できたことは患者のquality of lifeの面からも有用であったと考える.