日本消化器外科学会雑誌
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鈍的腹部外傷後の遅発性小腸狭窄が疑われる1例
毛利 貴羽田 丈紀加藤 久美子平林 剛増渕 正隆矢永 勝彦
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2008 年 41 巻 3 号 p. 311-317

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抄録

症例は78歳の男性で, 交通事故による腹部打撲で当院へ搬送され保存的加療を施行したが, 腸閉塞を繰り返したため腹腔鏡下手術を施行. 索状物による腸閉塞と診断し, これを解除した.しかし, 退院後も再度腸閉塞を繰り返したため再入院となった. 腹部単純X線検査でニボーを伴う小腸ガスを認め, 腹部CTでも腸閉塞の所見であったが, 腫瘤や明らかな閉塞機転は指摘できなかった. これ以上の保存的治療は限界と考え, 術後77日で開腹手術を施行した. 手術所見は前回手術で索状物のあった小腸に狭窄があり, 小腸間膜にも瘢痕を認めたため小腸部分切除を行った. 自験例では腹腔鏡下手術で索状物が同定されたため, それが原因と判断したが, 術後に文献的に報告がある外傷性遅発性小腸狭窄による腸閉塞を反復した. 腹腔鏡下手術では小腸の精査が容易ではないため, 外傷後の遅発性小腸狭窄と診断して手術を行う場合には, 腹腔内が十分検索可能な術式を検討する必要がある.

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